2013年12月9日月曜日

「読書の未来」、立花隆『読書脳:ぼくの深読み300冊の記録』巻頭対談、 350頁、2013年12月9日、文藝春秋 刊、pp. 13-45



石田
私は一九七二年に東大に入ったんですが、立花さんはよくご存じのように、その頃は学生運動がどんどん暴力的になって、対立するグループの抗争が激しくなった頃でした。は、立花さんの『中核vs.革マル』(講談社文庫)に私の名前が出てくるんですよ。「石田君」と

立花
えっ。

石田
インターネットで「石田英敬」を検索すると出てきますよ。当時の内ゲバで、中核派に友人が二人殺されました。その話が立花さんの本に出てくるんです。

立花
そうなんですか。石田さんとは何度もお会いしていますが、そういう過去をお持ちと
は、全然気づきませんでした。

石田
その事件の後、私は日本にいられなくなって、七五年にパリに留学したんです。

立花
そういうことだったんですね。留学中は、石田さんも相当ディープリーディングしたんじゃないですか。

石田
そうですね。生きていることの意味をかみしめながら、毎日、人でひたすら本を読む日々でした。当時読んだもの中で、とくに印象に残っているのは、Deleuze の Nietzsche et la Philosophie(邦訳『ニーチェと哲学』河出文庫)です。そζこに語られていたのは、肯定の思想で、へーゲルやマルクスの否定の弁証法に親しんでいた私には衝撃的でした。当時のパリはいまでいうととろのポスト構造主義の絶頂期で、ミシェル・フーコーやドゥルーズが活躍していました。私もコレー ジュ・ド・フランス(フランス最高峰の高等教育機関。講義は公開)に出かけていってフーコー の講義を聴いたり、ヴァンセンヌの森の大学(パリ第八大学)に行ってドゥルーズの講義を聴いたりしたんですが、そうした経験のおかげで、私はパリで新たに思想を発見することができたんです。それがいまの自分の研究の出発点になっています。


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