「シリーズ刊行にあたって」
インターネット、モバイル・メディアからウェアラブル端末、ICタグまで、SNS、ブログから、動画サイト、デジタル・アーカイブ、電子図書館まで。二一世紀の人類文明は、時間と空間、行為と場所、ヒトとモノ、感性と心理、思考と判断のあらゆる次元においてデジタル・テクノロジーに媒介されて成り立つようになった。
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そして、二〇世紀後半のコンピュータの発達によるデジタル革命は知をこれまでとは別の形で問い直す認識論的衝迫をもたらしている。今日では世界のあらゆる情報がデジタル化されるにともなって、人文知も再定義へと向かい、世界の大学・研究機関では、いわゆるデジタル・ヒューマニティーズの動きが盛んである。
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本シリーズでは、デジタルなメディア文化社会事象一般を研究対象にしつつ、過去八年におよぶこのような国際的な研究協働の成果の体系化を試みる。そして、これらの研究をここでは、〈デジタル・スタディーズ〉と呼び、メディア研究から出発したデジタル・ヒューマニティーズの理論と方法を提示することをめざす。
メディア批判の哲学的基礎とは何か、情報コミュニケーションテクノロジーと人文科学との界面とは何か、社会と文化の知のデジタルな書き換えはどのように行いうるのか、アジアという文明からの問いはメディアに関してどのように立てられるのか、私たちの世界の遍在化するメディア環境はどのような文化的社会的実践を可能にするのか。
二〇世紀のメディア哲学、メディア批判、表象美学、映像論、記号論、メディア社会学、文化研究、都市建築研究など複数領域の系譜を〈知のデジタル転回〉の文脈で受けとめ、その先端的な知を結集し、デジタル・テクノロジーの遍在する時代における、混成的だが根源的なメディア・スタディーズの新たな方向性を提示し、新しい知のパラダイムを展望する。
二〇一五年六月
シリーズ編者 石田英敬/吉見俊哉/マイク・フェザーストーン
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