緒言
これから、「トビウオと毒薬:フランス現代思想の系譜 ベルナール・スティグレールの仕事をてがかりに」という4回の講義を始めます。
まず、はじめにお断りなのですが、
私は、この講義を通じて、みなさんの期待を幾重にも裏切ることになるかもしれないということをあらかじめ申し上げておかねばなりません。
じつは、この講義のタイトル
「トビウオと毒薬:フランス現代思想の系譜 ベルナール・スティグレールの仕事をてがかりに」
には幾つもの誤解の余地が故意に仕組まれています。
まず、「トビウオと毒薬」というタイトルですが、「トビウオ」は魚のトビウオでよろしいのですが、「毒薬」をみなさんは当然のことながら「どくやく」と読んでしまっておられるだろうと思います。しかし、この漢字二字は私のタイトルでは「どくくすり」と読みます。あるいは「どく/くすり」です。「毒にも薬にもなる」という意味です。「ファルマコン」です。
トビウオは「思惟の自由」を、毒薬は「技術」を、このタイトルでは表意しています。
つぎに、副題の「フランス現代思想の系譜 ベルナール・スティグレールの仕事をてがかりに」ですが、「フランス現代思想の系譜」と聞かれると、きっと「思想史」のようなことを石田は話すに違いない、それを「系譜学」と主張しようという魂胆だろう、などと思われるかもしれません。しかし、私がお話したいのは、「フランス現代思想」という「世界史」のことです。
「ベルナール・スティグレールの仕事」というと、きっとベルナール・スティグレールの哲学の話をするのであろう、それをフランス現代思想の系譜のなかに位置づけようしているのだと皆さんは理解されるとは思います。それはまさしくそのとおりであるとしても、皆さんが期待されているかもしれぬ哲学者についての話し方をひどく裏切るような仕方で「位置づけて」いくことになるであろうと思います。
そのように、思想を語るための「前提」を何度も「覆す」ことをめざしながら、この講義は進められていきます。
講義の開始日までに、関連の文献や資料等を掲示していきますので、このブログの頁および私のツイッター(https://twitter.com/nulptyx)をときどきチェックしてください。
この新しい年が皆さんにとって悦ばしき知の年でありますように。
1月27日(水)にお会いしましょう。
2021年 元旦
石田 英敬
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